上手下手が舞台で使われる由来!歌舞伎が関係しているってホント?

娘が高校生の時に、合唱部の定期演奏会のリハーサルの写真を撮って欲しいと言われ、市民ホールに行ったことがありました。

その日にホールの客席に居たのは、舞台に向かってカメラを構えた私と顧問の先生だけ。まるで貸し切りのようで、なんとも贅沢な時間となりました。

私は、オーケストラや演劇などの本番さながらの通し稽古のことを「ゲネプロ」と言うのをこの時始めて知りました。他にも、上手下手など独特の言葉も飛び交い、舞台のゲネプロを目の当たりにして驚いたことを今でも思い出します。

舞台では、日常ではあまり出会うことのない用語が使われているように感じます。「上手下手」とは舞台ではどんな意味や由来があるのか、この機会に調べてみました。

舞台での上手下手の意味とは?

舞台での、上手(かみて)下手(しもて)という言葉は、立ち位置や方向を表しています。舞台では、右や左という言葉を使って位置を説明しません。

舞台に立つ人から見た上手下手とは?

舞台に立つ人から見ると、上手と下手は下の図のようになります。


観客席から見た上手下手とは?

観客側から舞台を見ている時には、上手と下手は下の図のようになります。

立ち位置によって上手下手って変わるの?と混乱するかもしれませんが、上手と言ったら舞台に立っていても観客席から見ていても同じです。

上手と下手は誰が見ても同じ場所になる

例えば、ミュージカルのリハーサルを観客席で見ていた演出家が「下手から入って上手へ移動して」と言った時のことを考えてみます。

観客席側に居る演出家が演者に向かって「上手」と言った時には、演者は下の図のように動きます。

一方、演者側からだと下の図のように動くことになります。

どちら側に居ても「上手に動くこと」とは同じ方向に動くことになります。

左右で言い表さないのは混乱するから

これを左右で表現すると、立ち位置によって認識が変わってしまいます。方向を説明するのに、いちいち「向かって左に」とか「そっちから見て右に」などと言わなくてはならなくなります。

人によっては認識が紛らわしくなり、混乱してしまいます。どの場所に居ても同じ認識を持っておき、スムーズに事が運んでいくための知恵として、上手と下手という言い方をしているんです。

それでは、どうして舞台では「上手下手」という呼び方を使うようになったのでしょう?由来には諸説ありますが、有力な説をいくつか紹介していきますね。

上手と下手の言葉の由来とは?

舞台で使われる「上手下手」の由来には、以下のような説があります。

左上右上(さじょううげ)の思想から

飛鳥時代、遣唐使などによって中国の思想が日本に伝えられました。当時の中国では、皇帝は不動の北極星を背に南に向いて座るべき、という考えがありました。

南向きに座った皇帝からすると、太陽が昇る東が左側となるため右よりも左が優位だとされていました。この考え方を「左上右下」といいます。日本でも飛鳥時代以来、同じように左側に偉い人、というしきたりが連綿と続いていると言われています。

舞台でも、ステージ上から見て左側が上手、右側が下手となります。相撲の番付も同じ構図で、西の横綱よりも東の横綱の方が上位だとされています。

神社が南向きに立っていたから

また、古い神社は南向きに作られています。

これは、日の光の当たり具合から明るくなるため南向きにしている説と、神社の舞台で神様に奉納する芸能を南向きにおこなうための説などがあります。いずれも南向きということから左を上手にした、と言われています。

歌舞伎によって上手下手が定着した

歌舞伎の舞台には様々な装置が施されています。位置や方向にも決め事があり、その中の上手下手という概念は歌舞伎の舞台を作るうえで重要なものになります。

例えば、身分の低い役の者は下手から登場したり、身分の高い役の者は左側に座る。大道具の位置関係も屋内は上手に、屋外は下手になるようにしてあります。

話しの流れの中にも、上手を東に下手を西に、客席を南にして進めることが原則となっています。歌舞伎では、お約束となっている上手下手の概念があってこそのストーリー、となる訳なんです。

このように歌舞伎によって、上手下手が舞台上での約束事として定着したことが現代の舞台にも受け継がれているのでは、と言われています。

まとめ

舞台上では上手下手という共通の概念があることで、関わる人すべてがスムーズに理解することができるんですね。ただでさえ白熱した場の中で、どっちにどう動いてなどの指示がうまく伝わらないのは困りますものね。

なかなか普段は使うことのない言葉ですが、歌舞伎を好きな人などはそこまでわかっていて、話の内容や時代背景まで理解できるというものなんですね。

なかなか奥が深いです。

今後、上手下手という言葉を使う機会はあまりなさそうですが、ミュージカルや舞台を観覧する時など気にしてみようと思います。

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